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【妄想】断片的なハヤテの過去エピソードを無理やり結合させる試み【SS風】

読んで字のごとく。
【注意】
145話までのネタバレの内容を経た上で書いた話です。
その上、これから明かされるハヤテの過去・経歴と矛盾がいっぱい出るでしょうけど、当方は一切関知しません。



彼女は、世間一般で言う不足を知らずに育った。
お城のようだと羨まれる豪奢な家。
お姫さまみたいだと褒めそやされるきれいなドレス。
毎日のご飯は、世界中から届く「一生に一度は食べたいもの」を、彼女の食べるものだけを作ることだけが仕事の人達が全身全霊をかけて作る。
そんな彼女の知る不足は、せいぜいベルを鳴らしてから使用人が来るまでにしか感じないものであった。

そのはずだった。
それなのに、彼女は散歩に出た帰りに、庭先に落ちていたものを拾ってきたのだという。

彼女と同じ年頃の子供だった。
この年頃の子は年齢が分かりづらい――実際、拾った彼女にしてもよく分かっていなかったらしい――上にひどく汚れた格好をしているのでなお分かりにくいが、どうやら男の子らしい。
まだ幼い彼女には、その男の子が庭先で眠っていた理由と拾った経緯がうまく説明できないらしく、彼女の言に使用人たちは目を白黒させていた。
ものが人間だけに捨て置くわけにもいかず、かといってこんな汚れだらけの物体を屋敷に置いておくわけにもいかず、使用人たちはとりあえずこの男の子の体を洗い、それなりの服を着せて客間のベッドに寝かせておいた。それでもこの男の子からは、妙にうらぶれたオーラが漂っている。意識を取り戻して不安げな男の子の顔をジロジロ見ては、食い詰めた両親が捨てていったのかと使用人たちは噂する。
その客間に、お嬢さまが拾い物を訪ねてきた。
「ごきげんよう」
「えっと……お、おはようございます」
幼いながらも、この屋敷の主の娘にふさわしい凛々しさを備えていた彼女の顔が、ふと緩む。
「ご機嫌はいかが?」
「え、あ、えっと……」
男の子はどうにも要領を得ない、というような顔で首をぐるぐる回す。
「貴方よ」
この対応に、彼女は機嫌を悪くしたらしい。ベッドそばの椅子に腰かけ、男の子を軽く睨む。
「名乗りなさい」
「……え?」
「名乗りなさい、と言ってるの。分かるでしょう?」
「えっと、人に名前を聞くときは、まず自分からって……」
「お黙りなさい。男性と女性が自己紹介をし合うときは、男性から名乗るのがマナーよ」
 男の子の小手先の反論をにべもなくはねて、更に男の子を睨む。
「あ……綾崎、ハヤテ……です」
「よろしい。わたくしの名前は、――」
両親が名づけに凝りすぎたのか、彼女の名前は、一回で聞き取って覚えるのが難しいといわれる。そして聞き返すと決まって不機嫌になるのだ。
「え? あー……」
まして彼女と同年代の子供ではほとんど理解できないだろう。
「あーたん?」
こうなるのがオチだ。
使用人たちが身構える。彼女が名乗って聞き返されたときは、たとえ財界の大物が相手でも怒りを隠そうとしないのだ。相手が子供、それも捨て子相手では何をしでかすか分かったものではない。
「……アーたん、ね。それでいいわ」
大方の予想に反し、彼女はむしろ機嫌をよくしたようだった。


話はとんとん拍子に進んだ。
綾崎ハヤテ少年はアーたんたっての希望によりこの屋敷で暮らすことになった。
急遽アーたんと同じ幼稚園に入園し、いつでも彼女の側にいるハヤテ少年と、ハヤテ少年が大のお気に入りでありつつ傍若無人に接するアーたんを、ある者は微笑ましく、ある者は苦々しげに見ていた。
いつしか貧乏臭さも抜け、末はお嬢さまの側近か、はたまた婿かと、大人たちが彼の行く末を本格的に勘定しだした矢先。


「僕の、お父様と、お母様?」
ハヤテ少年は、目の前の男女を、物珍しそうに見つめた。
「ああ、そうだ。君の父親、綾崎瞬だ! 親の顔を忘れたかハヤテ!」
綾崎瞬はハヤテの方を掴んでにじり寄る。
「顔は覚えていますけど……どうしていまさら」
「そのことに関しては、本当にすまないと思っている。起死回生のために、危ない橋を渡るのは、父さんと母さんだけで十分だったんだ。お前をここの家に預けておいた方が安全だと思って……」
「預けた? 貴方たちから託されたとは思えないような扱いでしたわよ?」
吹き抜けの上から訂正が降ってきた。
「ごめんなさいハヤテ。親子の話だから聞くまいとは思っていたのだけれど、ハヤテのご両親がハヤテを捨てた理由は、知らずにいられなかったのよ」
「アーたん……」
呆然とするハヤテ。
「今、話した通りでございますお嬢様。我々は商売が苦しく、もはや首を吊ってなけなしの保険金だけをハヤテに遺すか、失敗してもハヤテに累が及ばぬよう遠ざけてから、一つの賭けをするかしか道はなかったのでございます。一刻も早く息子を安全な所へ移したかった母心、どうかご理解くださいませ」
屋敷のロビーの床に頭を擦りつけて土下座する母。
「話が違います。ハヤテと一目会えればそれでいい。そうおっしゃったはずですよ」
アーたんの声が、十にも満たない小娘の口から発せられたとは思えないほど冷たい。
「ハヤテ! もう一度一緒に親子揃って暮らしましょう!」
「そして、また苦しくなったらハヤテを捨てるのですね?」
声だけではなく、両親を見る目も冷たい。父は顔を青ざめ頭を垂れ、母は頭を床につけたまま嗚咽を漏らす。
「我々に今更親を名乗る資格がないことは重々承知です。しかし……」
「わたくし、資格がないのを承知で抜け抜けと人によこせ差し出せという輩が大嫌いですの」
彼女には取り付く島もない。
「もういいでしょう。ハヤテは元気……」
振り返った彼女の顔が凍りつく。
ハヤテは呆けた顔で父と母を見つめながら、目から涙を流し続けていた。
「ハヤテ……」
彼女の呟きが聞こえたのか否か。
「お父さん……」
「ハヤテ! 今更言えた義理もないし、ここにいれば今後も何不自由なく生きていけるだろう。そんなお前にこんなことを言うのも辛いが、もしお前が、まだ私たちを親と呼んでくれるのなら、がんがえな゙おしてはもらえ゙ないだろ゙うが。もう絶対、二度どお前と離れ離れになるような真似はじないと約束ずるから……」
最後の方は涙のせいか、非常に聞き苦しい声を発しながら、ハヤテに右手を差し出す。
それに応えるように、ハヤテの手が少しずつ持ち上がり……
平手打ちの音がロビーに響いた。
「もういい!! だったら勝手にしろ!!」
普段の大人びた彼女なら、決してよその大人がいる場では使わない口調。目に涙をためながら、使用人に身振りだけで指示を出す。追い出せ。
「あ…アーたん!?」
「もうお前なんか…!!」
同い年の子供だけどころか、ハヤテと二人っきりでも滅多に使われない口調。
「ハヤテなんか………!!」
その口調で話されることは、建前も気遣いも論理もなく、感情のほとばしりをそのまま口から出したものだということは、ハヤテだけが知っていた。
そして、自分が取り返しのつかないことをしたことも、ハヤテは知ってしまった。



「いや、流石は僕の息子。1年のブランクも何のその、だな」
親子が再び一緒に偽絵売りを始めて三日。
布団に入ったハヤテを尻目に、綾崎夫妻は酒盛りに興じていた。
「むしろいいところに預けられてたおかげで、動きが洗練されてたじゃない。お客さん、感心してたわよ」
「貧乏臭いオーラも払拭されてたから、これでもうしばらくは続けられるさ」
「でも、こんなボロ家に住んでたら、それもいつまで続くかしら」
「金はあっても不動産屋のブラックリストには載りまくりだからなあ」
父はアルコール臭い溜息をついた。
「また貧乏臭くなってきたら、またハヤテを別なところに預けて、お兄ちゃんの方を引き取ってくればいいかしらね」
「んー。お兄ちゃん、そろそろ無邪気に絵売りをやれる年ではなくなってきてるからな〜。根本的に新しい商売を考えないとな」
「何にせよ、当分はうまくいきそうね」
夫婦は笑いながらグラスの縁を合わせた。



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んー。ちょっと無闇に綾崎両親を悪者にしすぎたかも知れない。
あと、アーたんと一緒だったのは幼稚園ごろ、偽絵売りをやってたのは4歳なので時系列的に贋作商の方が先だったのですが、修正しきれず力技でこじつけました。下調べはしっかりやろう。

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